タグボートギャラリーにて6月7日より個展を開催するアーティスト、アンタカンタ。オイルオンキャンバスという古典的な技法で線を強調した人物像を描き、作家が幼少から描き続けてきた少女「マリアカンナ」
本記事では、個展「Neo-Cloisonnism」の開催にあわせて作家と作品の魅力に迫ります。
アンタカンタ |
《思考と現実をつなぐ糸》2022年、キャンバスに油彩、24.2x 33.3 x3cm
アンタカンタは東京生まれ、現在は神奈川県在住。1990年代に現代アーティストとして活動したのち、起業。WEBサイトのプランニングデザインなどを手掛け、CEOとして会社を成長させていく中で経験した「思考が現実になる世界」をテーマとし54歳の時に再び表現者の道へ飛び込みました。
アンタカンタにとってタグボート初個展となる今回の展覧会。冠する「Neo-Cloisonnism(ネオ・クロワゾニスム)」は、作家自身が提唱する新しい表現手法です。
《上昇気流》2021年、キャンバスに油彩、91x 116.7 x3cm
作家を知るキーワード①
Neo-Cloisonnism ネオ・クロワゾニスム |
「クロワゾニスム(Cloisonnism)」とは、太く暗い輪郭線と平たい色彩構造を特徴とする表現方法です。特に、ルイ・アンクタン(Louis Anquetin, 1861-1932)やエミール・ベルナール(Émile Bernard, 1868-1941)、そしてポール・ゴーギャン(Paul Gauguin, 1848-1903)や彼に続くポン・タヴァン派、ナビ派など19世紀後半のフランス絵画界で好んで用いられました。
フランス語の「クロワゾン(Cloison 意味:仕切り)」が名称の由来となっており、もともとはステンドグラスや七宝細工(エマーユ)などにおいて色を分ける境界となる線を指す言葉でした。
ポール・ゴーギャン《説教の後の幻視》1888年、キャンバスに油彩、73 x 92cm、スコットランド国立美術館
画像出典:Wikimedia Commons
「ネオ・クロワゾニスム(Neo-Cloisonnism)」とは、このクロワゾニスムの手法・考え方を現代アートの文脈から捉え直したアンタカンタ独自の表現方法です。
キャンバスに油彩という伝統的な技法で、線を強調した人物を描く。遠近法やグラデーション表現を省き、古代の洞窟壁画や浮世絵などを経て現代へ受け継がれる輪郭線を主体とした絵画の文脈を再解釈しています。
作家を知るキーワード②
少女「マリアカンナ」 |
アンタカンタの作品を語るうえで欠かせない存在、それが少女「マリアカンナ」です。「マリアカンナ」は、作家が小学生の頃から教科書の隅に描き続けてきたという空想の少女。
マリアカンナの魅力は、作品ごとに異なる外見を見せてくれるところ。それは作家の親族であったり、友人であったり、様々な人々がその時々でミューズとなり、その造形に投影されているためです。
左:《言葉を見つける》2023年、キャンバスに油彩、91.0x 72.7 x4cm
中:《踊る少女(ドゥ)》2023年、キャンバスに油彩、65.2x 50 x3cm
右:《時間(じかん)》2024年、キャンバスに油彩、41.0x 31.8 x2.0cm
「画面の中で無邪気に振る舞うマリアカンナの姿を通して、社会の固定観念に囚われない『自由』を感じてもらいたい」と語るアンタカンタ。
作品を一つずつ見ていく中で、きっとあなたのお気に入りのマリアカンナに出逢えるでしょう。
個展「Neo-Cloisonnism」
作品のみどころ:「線」を考える |
「ネオ・クロワゾニスム」を軸として表現を磨いてきたアンタカンタ。作家の関心は「クロワゾニスム」の言葉が生まれた19世紀に留まらず、その遥か昔にまで遡ります。
ラスコーやアルタミラに代表されるような先史時代の洞窟壁画に始まり、古代エジプトの壁画や古代ギリシャの壺装飾、西洋中世の絵画、そして中国、日本、インドなどアジアの美術に至るまで、作家は幅広く興味を持ち接してきました。
左:動物の壁画(オーロックス、馬、鹿)、旧石器時代後期~末期、フランス南西部ラスコー洞窟
右:東洲斎写楽《大谷鬼次の奴江戸兵衛図》(江戸三座役者似顔絵のうち)、1794年、大判錦絵、東京国立博物館
共に画像出典:Wikimedia Commons
線の表現は年々変化を重ねており、元来より濃くしっかりとした輪郭線はより太く描かれるように。
《包帯(マハのポーズでティツィアーノの 話をするマリアカンナ)》2022年、キャンバスに油彩、65.2x 91.0 x3.0cm
本個展の新作《ハートオブハーツ》を見ると、輪郭線の内側に更に線が引かれていることが分かります。
肌色よりも幾分濃い色で引かれる線は、まるでマリアカンナの体温がじわりと滲み溶け出すような印象を与えます。
本個展新作《ハートオブハーツ》2024年、キャンバスに油彩、41.0x 31.8x 2.0 cm
脈々と受け継がれてきた絵画史の中で、描き手たちは「線」をどのようにとらえてきたのか?今の時代の絵画とは何か?その問いかけが作家の制作の原動力です。
アンタカンタが紡ぐ新しい線の歴史を是非会場でご体感ください。
個展概要
アンタカンタ「Neo-Cloisonnism」
2024年6月7日(金) ~ 6月29日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日の6月7日(金)は17:00に開場いたします。
※オープニングレセプション:6月7日(金)18:00-19:00
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
【事前抽選販売を実施中】
下記画像をクリックしてお申し込みページへお進みください。
応募期間:2024年5月29日(水)~6月3日(月)
当落連絡:2024年6月4日(火)
アンタカンタ |
【略歴】
1962年 東京生まれ 神奈川県在住
1981年 本郷高校デザイン科卒業
1985年 玉川大学文学部芸術学科卒業
1991年 毎日現代日本美術展 佳作賞(東京都美術館・京都市美術館)
ボイスを考える部屋展(ワタリウム美術館)
ヤンフート現代美術一日大学展 (ワタリウム美術館・石川県穴水町)
1993年 INAXギャラリー(東京)
2008年 株式会社アンティオ 起業( 美術館 WEBサイトのプランニング デザイン)
2015年 娘たちからもらった油絵の具セットがきっかけで絵画制作を再開
2017年 個展(アメリカ橋ギャラリー・恵比寿)
2018年 個展(NOMADICA・表参道)
2019年 アートオリンピア 準佳作
Independent Tokyo 2019(浅草橋)
2020年 FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展 入選 (損保ジャパン日本興亜美術館)
第29回 全日本アートサロン絵画大賞展 文部科学大臣賞(国立新美術館・大阪市立美術館)
第38回 上野の森美術館大賞展 入選(上野の森美術館)
Independent Tokyo 2020 審査員特別賞(産業貿易センター浜松町館)
2021年 Independent TOKYO タグボート特別賞 (産業貿易センター浜松町館)
個展 (渋谷ヒカリエ8/1,2,3,ギャラリー)
2022年 FACE展2022 損保ジャパン日本興亜美術賞展 入選 (SOMPO美術館)
2023年 ART NAGOYA 2023(名古屋観光ホテル)
tagboat Art Fair 2023
個展(ロイドワークスギャラリー)
個展(みうらじろうギャラリー)
Art Fair GINZA 2023 tagboat × MITSUKOSHI(銀座三越)
Art HAKATA by tagboat(博多阪急)
個展(Gallery Dalston)
2024年 tagboat Art Fair 2024